言わずと知れた007シリーズの最新作にして、ダニエル・クレイグ版ボンドの最終作。6年ぶりの新作公開となりますが、過去のダニエル・ボンドの各作が関連していることを、見たあとに気がつく始末。ぜひ、「カジノ・ロワイヤル」からの各作品を事前に予習（復習）することをお勧めします。もちろん、予習なしでも楽しめますが、複雑な人間関係をおさらいしておくと、さらに楽しめるものになるでしょう。前作「スペクター」にもいろいろな伏線が仕込まれていたのですね。
しかし、ダニエル・クレイグのボンドは、登場時は過去のボンドたちと比べてイメージが削ぐわないという前評判でしたが、「人間味」を最も備えたスパイだったということになります。これまでの、「かっこよく、女性にモテて、仕事もできる」一方、私生活や個人の感情が見えないスーパースパイ、というイメージから変わり、寡黙でタフで、しかし誠実で自分の気持ちを見せて確かめようとする、まさにスパイも生身の人間であることを示した15年といえるのです。
なお、そんなダニエル・クレイグも元はシリアスな俳優というよりはもう少し軽い感じで、「トゥーム・レイダー」では主人公ララ・クロフトの敵に雇われるトレジャーハンターを演じています。ダニエル・クレイグのイメージは、ボンドの15年を通じて自ら作り上げたものと言えますが、これからどのようなダニエル・クレイグになっていくのか楽しみです。
さて、本作では脚本も担当している、監督のキャリー・ジョージ・フクヤマですが、父親が日系3世とのこと、インタビューでも映画が日本の影響を受けざるを得ない、と話しています。実際に日本の建築や芸術を想像させるものも登場していますが、まあそうはいっても日本はそうじゃないんだよな、というところも・・・いわゆる大物監督ではないキャリー・フクヤマですが、今回の007で大物の仲間入りができるでしょう。アクションもストーリーも、ダニエル・ボンドシリーズの中でも秀逸で、シリーズの集大成として上手くまとめることができたといえます。
そして、既にネットでも評判になっているようですが、キューバのCIA諜報員を演じたアナ・デ・アルマス。なぜ出演時間がそんなに短いのかと思ってしまう美貌とスタイル、そして演出通りの予想外のアクションのキレっぷり。役割を果たすとすっぱりとボンドと別れていく姿も、新しい007シリーズの到来を予感させるものでした。
最後に、後任007として指名されていたのはラシャーナ・リンチです。黒人女性という、これまでの007像とは全く違いますが、次期007との声も。一方、プロデューサーのバーバラ・ブロッコリは原作通り、ボンドは男性だとの見方を示しており、次の007が誰になるのか、実際には次回作までわからないようです。
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